トップ > 活動記録 > 提出文書 > 総務省へ提出した要望・質問状について、総務省と意見交換 (電磁波問題市民研究会の会報より転載させていただきました=総務省側個人名削除など一部改変)

 2006年5月31日、新東京タワー(すみだタワー)を考える会[共同代表:大久保貞利(電磁波問題市民研究会・事務局長)、網代太郎]が、総務省に対して、「新東京タワーと地上デジタルテレビ化に関する要望と質問」を交渉を行った。総務省からは、情報通信制作局・放送技術課から2名、同局・地上放送課から2名、同局・電波環境課から1名、同局・放送部・放送課から1名が出席した。
 総務省は終始「新東京タワーという建物については我々は関知するものではない」という態度を貫き、誠意のない対応であった。その話し合いの模様を紹介する。
 1.建設決定プロセスの非民主性について


【要望・質問状内容】

 新東京タワー建設については周辺住民への説明会等がないまま、わずか4カ月で「決定」された。WHOは2004年10月発表の「科学的不確実分野における予防方策開発のためのフレームワーク」で「電磁波を発生する施設の建設にあたって、計画段階から利害関係者の参画の必要性がある」旨を言及している。今回のような住民の声を聞かないで決定するやり方は時代錯誤ではないか。

【意見交換概要】
  総務省 新東京タワーは候補地が決まったという段階で、その周辺住民に対しては、事業者が説明をすると聞いている。
 新東京タワーを考える会(以下・考える会) それは総務省は関係なく“事業者”が説明し、民民のことなので総務省は関知しないということか。新東京タワーは単なる建物ではない。WHOもフレームワークで、電磁波を出すものに関して、ステークホルダーに事前に説明すべきだとしている。
 総務省 我々も事業者がステークホルダーに説明をするのが望ましいと考えている。しかし総務省としては、これ以上のコメントはできない。
 考える会 繰り返しになるが、新東京タワーは単なる建物ではない。地上デジタル化の中の重要な位置を占めるものだから、総務省が関与すべきだ。地デジ化は総務省が進めているのではないか。
 総務省 墨田に決定したというが、まだ候補地に決まっただけ。そこにどんなものができるか、まだ何もわからない。だから住民に説明できる事柄がないから、説明会は行えないという状態にある。
 考える会 墨田区の考えでは、住民への説明は、法的拘束力があるアセスメント法に基づくものでなく、自主アセスメントでやると言っている。だから、やらなくてもいいけど、やってやると考えだ。それとも総務省はアセスメント法に基づくものを考えているのか。
 総務省 それはわからない。住民説明会を含めて、計画が固まってから我々は許認可をする立場だ。
 考える会 そうかもしれないけど、タワーが建ってからアセスメントを行うとコストや手間がかかりすぎる。リスクコミュニケーションの考えに基づいて説明すべきだ、と我々は考えている。それが戦略的アセスメントであるはずだ。

 2.デジタルマイクロ波の健康影響について

【要望・質問状内容】

 新東京タワーからデジタル用のマイクロ波が周辺に照射されるが、このような高周波電磁波の生体への影響について十分な調査研究はなされていない。1996年12月にオーストラリアのブルース・ホッキング博士がシドニー郊外の放送タワー周辺の小児がんリスクの疫学調査を発表したが、シドニーの放送タワーの出力は現東京タワーの10分の1。本来ならば、まず現東京タワー周辺の疫学調査をした上で、新東京タワー建設の安全性に関する判断材料とすべき。このような指導をいまからでも事業者にすべきではないか。

【意見交換概要】
 総務省 新東京タワーは、今の東京タワーと出力は変わらず、今より高くなるので電波が強くなるというのではなく、遠くに飛ぶようになるということだ。地表面ではむしろ弱くなる。
 考える会 それについての確かなデータはあるのか。
 総務省 これは一般論としての話だ。
 考える会 一般論ではなく、実際のデータを出して欲しい。高くなるから、地上に届くのは弱くなるというのなら、きちんとそれを説明して欲しい。タワーが高くなることで電波を遠くに飛ばすため逆に強くなると考えている。
 それと、新東京タワーはまだ出来ていないから、電磁波の影響はわからないと言えるのか。シドニーの放送タワーの疫学調査から類推すると影響があると考えられる。WHOも新技術に対して不安視している。
 総務省 ホッキング論文については、その後「影響なし」という調査もある。だから放送タワーの電磁波は影響ありとはいえない。
 考える会 そういう論文があるのは知っているが、それは現在議論中である。では現東京タワーの疫学調査を行うべきではないか。

 3.景観問題について

【要望・質問状内容】

 カナダ・トロント市にある現在世界最高(553m)のCNタワーはオンタリオ湖に面して建てられており、周辺は住宅街ではない。ところが、新東京タワーの建設予定地の墨田区押上・業平橋周辺周辺は個人商店や一般住宅がひしめいている。周辺住民に対する景観悪化への配慮をした上での決定とは決して言えない。景観問題にどのようなお考えをお持ちか。

【意見交換概要】
 総務省 景観についてはコメントできない。デザインはどういう風になるのか、事業者が住民の意見を聞きながら決めていくと思うので、総務省はお話しすることはない。
 考える会 これは景観に関することだけでないが、新東京タワーは地デジに関連した懸案なので、総務省は関係ないということは考えられない。総務省には関係ないから知らないでは、あまりに無責任すぎる。

 4.地上デジタル化に必ずしも新東京タワーは必要ないのでは

【要望・質問状内容】

 すでに現東京タワーは地上デジタル放送用のマイクロ波を発射している。国内では愛知県瀬戸市のデジタルタワーと新東京タワー以外に地上デジタル放送用の新タワーを建設する動きは聞いていない。このことは、特別に新タワーを建設しなくても、別の技術でデジタル化に対応できることを意味しているのではないか。

【意見交換概要】
 総務省 現東京タワーでも地デジ対応のサービスを行っている。タワーをより高くした方が1セグ放送などのことを考えると、よりサービスが向上できると事業者は考えている。だから新東京タワーは、1セグ放送などのサービス向上のため事業者が望んでいるもの。
 考える会 新東京タワーはさまざまな不明点も多いし、周辺住民が半ば無視されて進んでいる。今の東京タワーでも十分サービスは提供できると我々は考えている。“よりよいものを”と言うが、今の東京タワーでサービスが提供できないという状態ではないはず。確認するが、現在の東京タワーでもいいのではないか。
 総務省 現在の東京タワーでも問題ない。
 考える会 地デジに関して、新東京タワー以外には、愛知の瀬戸タワーがあるだけで、他には地デジ化に向けて建設予定はあるのか。
 総務省 他の都市の事業者がどう考えているのかわからないので、これからどこに建つ可能性があるのかはわからない。
 考える会 2011年というタイムリミットがあるので、これから先新たなタワーが建つことはないとみている。もし、先ほどの話でいうサービス向上が目的なら、他の都市もサービスを向上させるために新たにタワーを建てるはずだ。もし建てないなら、東京、名古屋などの地区と他の都市との地域格差が生まれるのではないか。
 確認するが、現在地デジ化を進めている中で、新しいタワーを建てることについて総務省は、報告を受けているか。事実として応えて欲しい。
 総務省 現在はない。

 5.そもそも地上デジタル放送は、なぜ必要なのか

【要望・質問状内容】

 総務省が推進している「2011年から地上デジタルテレビ放送全面移行」方針は、国民の要望とは思えません。2005年3月に行った貴職調査でも「2011年に現行アナログ波は停止する」ことを知る人はわずか9.2%しかいない。すでに多くの識者が指摘しているように、地上デジタル放送は、@「国民のニーズに対応」というが国民のニーズは検証されていないA「アナアナ変換」等、移行には莫大なコストがかかるBチャンネル数の増加にソフト(番組)の質が対応できず質が落ちるおそれCデジタル電磁波の健康影響問題D2011年までにデジタル対応テレビおよびチューナーが買えない層が生まれるEデジタル放送の難視聴地域の解消の困難さ、等があり、「PSE(電気用品安全法)の二の舞のおそれ」があることは否定しがたいと思える。

【意見交換概要】
 総務省 平成10年に地デジ懇談会で通信放送のデジタル化が考えられ、その中で電波の効率的利用とデジタル化によりサービスを向上させるために取り組んで行こうと決まった。懇談会の報告なので、課題なども盛り込まれているが、総務省としては国民の共有財産である電波を効率的に利用することを進めるのが国の役目であり、テレビのサービス向上のためのデジタル化の方向性を出し、平成13年に電波法を改正して、2011年までにデジタル化、アナアナ変換などの制度を整えた。そういう過程で、国民のニーズにより進められたかというと、国会でも承認されている。アナアナ変換については必要最小限の作業でかかる経費についても承認されている。
 考える会 国民のニーズと言うが、需要があるからではなく、メーカー側が供給しているだけで、ニーズではないのではないか。
 総務省 一般の国民からあがってくる声に任せるのではなく、技術的に知識がある人に先導してもらうのは仕方ないと考えている。それはつまり、一般国民から上がってくる声だけでは、質の高い生活は享受できないからだ。
 また、地デジについて認識しているのが1/3という数字については「地デジとは何か」「テレビがアナログから、デジタルに変わる」ということについての認識はもっと高い。2011年7月にアナログ放送が終了することを知っているのが1/3ということ。いずれにしても危機意識はある。
 考える会 2011年7月突然テレビが見られなくなりショックを受ける人は多いはずだ。今の社会は格差社会になって、テレビが唯一の楽しみという人も多い。そいう人にとって最大の問題である。2011年7月に拘らず、先に延ばすことは考えられないのか。
 総務省 残された人を見限ったり、足切りをすることはありえない。だからそういう人にも対応できる安価な商品を追求している。これから5年の間に買い換える機会があれば地デジ対応のものを買えるよう、メーカーにニーズに対応した商品の品揃えをしてもらうようにしている。
 考える会 足切りはしないというが、現実的に考えるとそんな簡単なことではない。総務大臣が一人も泣くようなことをしないといえばいいが、これまでの例で言うと、弱者が見捨てられた例がいっぱいある。特に難視聴地域の解消は難しいのでは。アナログの場合は、かなり時間をかけてやったが、これから5年でデジタルに対応するのは簡単ではない。共有視聴施設についての民民の問題もあるし。
 総務省 共同視聴施設は、国がつくったわけでないし、地元の人や町などが作ったことを考えると、我々だけでできるものではないと認識している。いろいろな関係団体と連携をとり、やっているプロセス段階である。難試聴地域については、最終的に自治体などと協力し、問題点を洗い出すなどして進んでいるので、無視しているわけではない。
 考える会 チャンネル数の増加による番組の質の低下への懸念は。
 総務省 地デジはアナログからデジタルになり、デジタル1チャンネルが最大3チャンネル使えるが、当面は1チャンネルは1チャンネルのまま。チャンネルを増加させるのはNHK教育だけ。もし低下し、良質な放送ができないのであれ、社会的に陶太されていくだろうし、放送法、電波法があるので、総務省が指導していく場合もある。
 考える会 今のところ候補地が決まっただけで関与することはないというが、今後どの段階で総務省は関与していくのか。
 総務省 総務省としては、交信局の免許の申請が出されたら認可をする立場で、その内容も技術的なもの。新東京タワーは親局で、東京タワーから移転となるので、無線設備の設置場所の変更の許可という扱いになる。それと高さがあるので、放送範囲の変更もあり、交信区域の変更とともに放送区域の変更がある。さらに、無線設備が変わるので、工事許可書を改めて申請を出してもらうことになる。それは電波法に定める技術に適合しているかどうかということが審査の対象になる。
 考える会 電波と技術的な事以外、経営などについて総務省は関与しないのか。
 総務省 無線局免許については関係ない。放送局の場合、再免許5年のときに事業収支見積もりを出してもらう。その中で、事業経営が担保できるかを審査する。新しくできるタワーの費用をその収支に入れることも考えられるが、その数字が経営に影響なければ再免許を交付する。
 考える会 新東京タワーは賃料だけでなく、観光収入も目論んで採算を考えているようだが、回収するにはかなり長期になり採算がとれないので存続していくのが難しいのでは。
 総務省 総務省は鉄塔などの建物の上のアンテナに対して免許を交付するので、その下に建物については関与するものではない。それはやはり民民の問題になる
 考える会 しかし、携帯タワーでもそうだが、景観面で考えると、盛岡などでは景観条例、美観条例に付与し、高さ10メートル、あるいは15メートルを超えるものについては住民に事前に開示し、審議することをしなければ、新しいものに対応できないという地方自治体の考えである。


 最後に交渉では、新東京タワー建設にしても、地上デジタル放送化にしても、計画段階や計画実行中、あるいは事前・事後のアセスメントにおいて幅広い国民の声を吸い上げるようなシステムなど、何らかのかたちで国民の声を聞く場を作ってほしい点を要望した。新東京タワー(すみだタワー)を考える会が総務省に渡した「要望書と質問」は別ページに掲載しているので、そちらを参照いただきたい。
 地上デジタル放送は随時全国に広がっている。そして2011年7月にアナログ放送は終了する。そのとき本当に、国民の財産である電波は、すべての国民が共有できているのか。甚だ疑問が残る交渉であった。
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