トップ > 活動記録 > 寄稿 > 「消費者リポート」(2007年8月17日付)掲載記事
 指摘されていた新タワーの電磁波障害


新東京タワーを考える会 網代太郎

 「東京タワー」が小説や映画をきっかけにブームです。東京タワーは、テレビ電波を首都圏へ送信するために建てられました。この役目が2011年以降、「新東京タワー(すみだタワー)」に取って代わられるといいます。
 新東京タワーは、東京都墨田区押上(おしあげ)に建設が計画されています。高さは、東京タワーの333mに対し、新タワーは610mにもなります。東武鉄道の子会社新東京タワー社が建設し、同社がテレビ各社に電波送信施設設置スペースなどを賃貸するとのことです。
 新東京タワーを誘致した墨田区は「新タワーに世界中から観光客が訪れ、その経済波及効果は、計り知れないものがあります」と、メリットを宣伝しています。

海外の疫学調査で小児白血病死亡率2倍以上
 ここで詳しく書くスペースはありませんが、地域経済への影響は、墨田区などが言うプラスの影響だけではなく、マイナス面もあるはずです。そのほか、地域の景観や日照への影響、風害、交通渋滞などのデメリットが懸念されます。地盤が悪い地域なので、大震災が起きた時に大丈夫かという不安もあります。特に、人口密集地に建設されるタワーから24時間、休むことなく送信されるテレビ電波(電磁波)が、周辺住民の健康に影響を与えないか心配です。
 海外では、放送タワー周辺の住民を対象にした疫学調査例があります。たとえば、オーストラリアの電信電話会社テルストラ専属医だったホッキングさんらは、シドニー郊外の3基のテレビ・ラジオ塔から近い3自治体の小児白血病死亡率は、その外側の6自治体の2.32倍だったと1996年に報告しています。
 放送タワーからの電磁波と住民の健康影響との関連について、現時点で証明されているとは言えませんが、疑うに足る根拠があるのです。

新東京タワーは不要 実は携帯電話のため
 墨田区やマスメディアなどは「地上波デジタル放送のために新タワーが必要」と言っていますが、地デジの電波は、東京タワーから既に送信されています。地デジを推進している総務省も「東京タワーでも問題ない」と明言しています。
 つまり、新東京タワーは必要不可欠な施設ではないのです。不要なものを建てることによるリスクやデメリットを(たとえそれらが小さくても)市民が我慢しなければならない理由はありません。
 新タワーを建てる真の理由は、携帯電話などで見る地デジ放送である「ワンセグ」のためです。きちっとしたアンテナを付けた家庭やオフィスのテレビと比べて、携帯電話などはビル影などによる受信障害を受けやすく、その対策として、より高い新タワーの建設によりビル影などを小さくして、ワンセグの受信可能地域を広げるというのです。
 新タワーを建てなくても、受信障害地域ごとにギャップフィラーという装置を設置するなどの対策により、受信障害対策は可能です。しかし、新タワー建設は、それらの対策の削減という大きな利益をテレビ各社にもたらします。

都が協力しない理由は電気機器に障害の恐れ
 新タワーからの電磁波の影響が無視できないことは、別の形でも指摘されています。新タワーの建設予定地が墨田区に決まる前の2001年、秋葉原の都有地などに新タワーを建てる構想が持ち上がりました。しかし、東京都は新タワー建設に「協力することは困難」との結論を出しました。その理由の一つは「NHK技術研究所の実験結果によれば、新タワーの電波により、高感度の受信機ではノイズ等が発生する懸念がある」という問題があることでした。この問題は、東京都参与で元松下通信工業常務の唐津一・東海大学教授が指摘しました。
 唐津教授の指摘は、秋葉原タワーと同じ目的・同じ規模の新東京タワーにも当てはまるのでは、と推測した私は、この実験内容と結果についての情報開示をNHKに請求しましたが、「開示した場合、当該在京民放5社およびNHKの今後の事業活動に支障を及ぼすおそれがあるため(略)開示することができません」という、「不開示」の回答が送付されてきました。NHKが“今後の”事業活動に支障があると回答したことにより、私の推測は当たっていそうだとわかりました。

新タワー誘致を突然発表した墨田区の姿勢
 墨田区は町工場が多く立地する場所であり、そこで使われている機器などに新タワーからの電磁波の影響がないのか、また、テレビ・ラジオへのノイズ、家電の誤作動など、住民の生活に影響はないのかなどが事前に検証されるべきです。前述の通り、新タワーは主としてテレビ各社の利益のために建設されるのですから、NHKなど各社には新タワー周辺住民への説明責任があり、「不開示」決定は不当なので、私はNHKに対して再審査を請求しました。
 また、「新東京タワーを考える会」は、NHKの実験結果について「情報開示を求め、その情報を区民に公表してください」との公開質問状を4月に墨田区長あてに提出しましたが、区長からは「市民が公開請求して拒否されたのならば、区が請求しても拒否されるだろう」旨を理由として、情報開示を求めない、との回答が5月にありました。
  住民の健康や生活を守るべき自治体が、NHKに問い合わせることすらしないと回答したことは、まったく理解できません。新タワー建設という政策目標の実現のためには、都合の悪いことには目をつぶるという、墨田区の姿勢がハッキリしてきました。
 そもそも、新東京タワー誘致は、住民無視で決まりました。04年12月に墨田区長が突然、誘致を表明し、そのわずか4カ月後に、墨田区が建設地の「第一候補」に決まったのです。

追加された電磁波の環境アセスも期待薄
 新東京タワー建設を核とした一帯の開発事業について、東武鉄道と新東京タワー鰍ヘ環境アセスメントを行っており、8月に評価書案が公表される予定です。新タワーからの電磁波についてはアセスメントの対象外でしたが、住民などからの意見を踏まえ、東京都は東武鉄道などに対して、評価書案などに電磁波について出来るだけ詳しく記載するよう求めました。
 私たち「新東京タワーを考える会」は、新東京タワー社に対して、環境アセスメントの評価書案公表前に、電磁波についての調査手法などについて意見交換したいと申し入れましたが、拒絶されました。
 以上のように、一貫した住民無視の中で、新タワー計画が進められています。

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