トップ > 活動記録 > 寄稿 > 「電磁波研会報第77号」(2012年7月29日付)掲載記事
 スカイツリーで地元に悪影響


新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会 網代太郎

スカイツリーで地元に悪影響
区内商店売上減、ごみ、騒音…


 7月8日に都内で開かれた「第9回東京自治研集会」(東京自治労連などによる実行委員会主催)の「開発・まちづくり分科会」で、「すみだスカイツリー開発の光と影」と題して東京都墨田区議会議員(共産党)の西恭三郎さんが報告しました。「開発」がこの分科会のテーマですが、筆者も主催者側からの依頼で、スカイツリーの電磁波による健康影響の恐れや、地デジタワーとしてはそもそもスカイツリーは必要不可欠なものではないことを報告しました。電磁波について西さんも懸念を持っていて「健康調査を行うよう保健所に働きかけている」と発言しました。
 ここでは、西さんの報告の中から、現状報告についての部分を中心に紹介させていただきます。

 スカイツリーが立地する墨田区はもの作りの街で、町工場が多い街だ。工場の人たちが商店街で日用必需品を買い求めている。観光にはほとんど縁がなかった。観光地には宿泊施設があるものだが、墨田区に主なホテルは三つぐらいしかない。
 しかし、スカイツリーができて様変わりした。昨年あたりからマスメディアが連日報道し、工事中は写真撮影の人が殺到した。5月22日の開業以来は、毎日何万人以上が押し寄せてくる。
 昭和33年に東京タワーが出来た時には、下に店はそれほどなかった。しかし、スカイツリーは売り場面積5万2000uの大型商業施設「東京ソラマチ」を作った。この面積は、墨田区内の小規模小売店の総売り場面積の半分にも相当する。

がめつい東武
 この中に312店舗が入ったが、そのうち300店舗が都心などからのブランド店だ。ソラマチの店じたいは赤字になっても、広告塔になれば良いということだろうと思う。
 私たちは墨田区内の商店の入居を優先すべきと主張した。最初に区内商店対象のテナント募集説明会が開かれ400店舗が集まった。しかし、坪3〜5万円の家賃に加え、売上げに応じて7〜17%を支払うという条件だったため、とても採算が合わないということで、入居の希望は一社もなかった。
 一方、都心で説明会を開いたら1400店舗が集まった。その中から300店舗に絞った。
 区内から一社も出ないのはたいへん問題ではないかということで、墨田区も交渉して、ようやく15店舗が入った。これらも、墨田区内では相当有力な企業だ。
 東武は家賃で絶対に妥協しない。仕方がなく、区で年間2900万円を負担し、区内物産の直販所を設けた。
 私は東武鉄道の取締役会の議事録を入手して驚いた。このツリーは千載一遇のチャンスだ、どう東武がもうけるかだ、いかにして公の金をつぎ込ませるのかにあるのだ、という趣旨のことを取締役会で議論していた。それぐらいの、がめつさだ。東武鉄道は、区民のためということは頭の隅っこにさえなく、自分のグループ企業がどれだけ利益を上げるかだけだ。
 さすがに東京新聞が開業日に社説で「残念なのはスカイツリー内に併設される商業施設『東京ソラマチ』が、ブランド店ばかりなことである。テナント料が高く、出店できなかった地元商店街では客足が遠のく恐れもある。地域と共存する配慮を望みたい」と書いた。

売上げ10分の1の店も
 工事中は、中に入れないので、近隣の商店街はけっこう繁盛した。テレビでも放送されたが、そば屋は天丼のエビをタテにしてツリーの真似をしたら売れたとか、何でもかんでもツリーの格好をすれば売れた。
 ところが、開業日とともに様変わりした。一番響いたのはお土産店で、人が全然こなくなった。店の人がお客に尋ねたら「スカイツリーやソラマチの中で買わないと、お土産にならない」と言われた。
 数百m離れたある居酒屋は、開業前は毎日10〜15万円はコンスタントに売り上げていたのに、開業後は1万円しかないこともあるという。「これからどうなるのだろうか」という悲鳴が聞こえている。
 区はスカイツリーの経済効果を880億円と試算したが、今後を見なければならない。
 一度はスカイツリーへ行ってみようという区民も多い。展望台は予約でいっぱいなので、スカイツリータウンの中を散歩する。中で安売りをしている弁当を買ったりする。主婦もお茶をする時にソラマチへ行く。生鮮品も売っているので、普段の買い物もできる。それで他の地区の売上げが減る。

周遊しない観光客
 区はスカイツリーの観光客になんとか区内を回遊してもらうと、ミニバスを3路線開設した。乗車料100円で、1回乗り換えても100円のまま。これを観光客でなく、区民が買い物や通勤に使っている。タワーを中心にしたルートなので、区民がバキュームのようにタワーに吸い寄せられている。競合する都営バス路線の削減の話があり、削減反対の署名運動が起きている。
 区内を周遊したくても、観光バスの駐車場が足りず、2時間しか駐車できないので、展望台やソラマチの中を見るだけでも時間が足りない。
 観光バス以外の客も、東武がスカイツリーから運行している浅草、上野や東京ディズニーリゾートなどへの直行バスに乗って行ってしまう。
 中で買った弁当を表のベンチで食べて、ごみを捨てていくなど、ごみが大変な状態だ。ガムを捨てられることも多く、近隣町会が一生懸命ごみ拾いをしていたが、ガムをとるのは大変。また、スカイツリーの前の川の中にもごみが捨てられる。
 ツリーの下だけは道路がきれいになったので、夜は暴走族にもってこいの遊び場になり、朝まで話し声や爆音で近隣住民が眠れないという事態も起きた。

区の関連支出で区民生活にしわ寄せ
 区は3900万円の補正予算を6月議会で組んで、専門業者にガムや川のごみなどをとってもらったり、夜間に警備員2名を配置することにした。この費用は東武が負担すべきと区議会各党が主張し、区と東武が交渉中だ。
 タワー関連事業への墨田区の支出は、われわれが議論して約30億円減らしたが、それでも108億円にのぼる。また、スカイツリーの隣に踏切があり、観光バスはここを通るので大渋滞が起きている。これを高架化するために275億円かかり、約60億円が墨田区の負担になる。合わせて200億円近くで、墨田区の区民税の一年分に相当する金額だ。税金の使い方がこれで良いのかと思わざるを得ない。
 東武から墨田区へ税金は一銭も入ってこない。特別区なので、法人税、固定資産税は都が徴収する。雇用は5000人のうち非正規1200人が区内からだが、これで区民税の徴収は増えるのか。
 墨田区は全国に先駆けて、住宅の不燃化助成制度をやっている。33年間で83億円を支出した。ツリーのためにこの5年間で使ったのも、ちょうど83億円。しかも、今の山ア昇区長に変わってから、お金がないという理由で、不燃化助成の金額はどんどん減っている。前の2人の区長のペースで助成を進めていたら、現在の倍以上の不燃化ができて木造住宅密集地域の解消も大きく進んでいたはずだ。
 一方で、東武グループは一年間で純利益200億円を見込んでいるという。スカイツリーは1000億円かかったと言われており、5年でもとをとることを目指しているのかもしれない。

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