トップ > 新タワーの問題点(2008年8月30日更新)


 拙速な誘致


2004年11月25日に、山ア昇・墨田区長が区議会本会議で、新タワーの誘致を表明。墨田区が建設地の第1候補地と発表されたのが、翌年3月28日。この間、わずか4カ月。住民への説明不足は明らか。新タワーのメリットだけでなく、心配されるデメリットについても住民に示し、それら両面から十分に検討をした後に、新タワーを誘致するかどうか決めるべきだった 。

 経済面

墨田区は、新タワー建設により世界中から観光客が訪れ、経済波及効果は計り知れないと言う。しかし、タワー・展望台は、多くの人にとって“一度行けば終わり”。各地のタワー・展望台でも、入場客はオープン直後のピークから急速に減少。「タワーの集客数維持、タワーの経営は、困難な事業だ」と、墨田区を新タワー候補地に選んだ「有識者検討委員会」自身が指摘。
(「新タワー候補地に関する有識者検討委員会答申」より)


新タワーに付属して「商業ビル」などが建設される。この商業ビルをはじめ、タワー周辺では、大手資本によるショップ、レストラン等の進出が相次ぐことが予想され、地元および周辺商店等を圧迫する恐れが大きい。
新タワーによって、周辺のまちのあり方が大きく変わる可能性があるが、それは総じてメリットだと言えるのか。
新東京タワーの建設費は、事業所による当初の説明では500億円だったが、鉄鋼の高騰などにより着工時に600億円以上に増額された。
墨田区は新タワー建設費を負担しないので、財政負担はないと言っている。しかし、区による新タワー会社への出資が検討されているほか、周辺整備(北十間川の親水整備)や観光客誘致策(北斎館など)については、区の厳しい財政状況にもかかわらず、区は総額105億以上を支出しようとしている。住民サービス低下の形でのしわ寄せが予想される。
墨田区が東武鉄道に対して新タワーの誘致を要請した経緯を考えると、将来、新タワーのさらなる建設費高騰や経営悪化により財政支援を要請された場合に、区は断れるのか?
新タワーの実質的な事業主体である東武鉄道は、新タワーの経営が悪化した場合、鉄道の安全対策などへ本来回すべきお金を、タワー事業につぎこんでしまう心配はないか。

 環境悪化

日照権:高さ610mの巨大タワーなので、その陰に入る住宅などは、かなり多い。
景観権:現在、高さ世界一のCNタワー(カナダ)や東京タワーは高層オフィス街に立地しているが…
すみだタワーは、低層ビルや住宅地の中に建設される。
(東武鉄道・新東京タワーの旧サイトより)
下町に忽然と現れる600m級の巨大構築物は、周囲に大変な圧迫感を与える。
眺望権:隅田川花火大会が見られなくなる所も。
大気汚染・騒音:新タワーを訪れる自動車による汚染、騒音。
 防災

建設場所は地盤が軟弱で、震災時に特に大きな被害が出ることが心配されている地域。高さ600m級の新タワーが持つ「固有周期」は理論上、関東平野での大地震の「長周期地震動」と周期が近く、“共振”による新タワーへの被害の恐れがあるので、固有周波数をずらす設計が必要とのこと。また、墨田区周辺地域では表層地盤として、沖積層の堆積層が厚さが30〜40mあることから、地表付近で短周期地震動の増幅が大きくなるため、沖積層よりも堅い砂礫層等を支持層とするタワー基礎の設計や、敷地周辺も含めた地盤の液状化・流動化対策が必要になるとのこと。以上は技術的に対応可能だという。しかし、私たちは阪神淡路大震災や原発立地地域における大地震で、人間の予測を超え、対応できたはずの技術が及ばなかったことによる被害も経験している。
600m級のタワーは、高層の強い風を常時受ける。従来の建築物のための風環境評価は高度200m程度までを対象としており、高度600mにわたる風速分布モデルについてはデータが皆無に近い。つまり、高さ600m級のタワーは、耐風性・風害の点からは「未知への挑戦」となる。
 電磁波による健康影響


電磁波は、有害なのか、無害なのか、決着はついていない。しかし、有害であると疑うのに十分な研究報告がある。
「深刻な、あるいは不可逆的な危害の脅威のある場合には、完全な科学的確実性の欠如を理由に、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期してはならない(1992年、「国際環境開発会議」における「環境と開発に関するリオ宣言」)」という「予防原則」などの考え方から、世界各国では、電磁波に対してそれぞれの対策を講じている。何もなされていないのは日本ぐらい。
携帯電話や、携帯電話の中継基地(アンテナ、鉄塔)、蛍光灯などから発せられる、身近な電磁波に反応して、頭痛、吐き気、動悸、皮膚への刺激、集中力欠如など、様々な症状が出て苦しむ「電磁波過敏症」の発症者が増えている。厚生労働省の補助金を受けた石川哲・北里大学名誉教授を中心とする研究班がまとめた報告書は、電磁波過敏症と診断された26〜61歳の男女7名の症例を報告している。人口の1%程度が電磁波過敏症を発症していると推定する医師もいる。電磁波過敏症は、大量の電磁波に被曝したり、または、微量でも繰り返し電磁波に被曝することにより発症されるとされている。身の回りの電磁波が多くなるほど、この病気になる危険性も増える恐れがある。新東京タワーが出来れば、周辺住民が電磁波過敏症を発症するリスクが高まる可能性が大きい。
オーストラリアの電信電話会社「テルストラ」の専属医だったホッキングらは、シドニー郊外にある3基のテレビ・ラジオ放送タワーと、14歳以下の小児がんとの関係を調べて1996年に報告。タワーから近い3自治体と、その周囲の6自治体を比較したところ、脳腫瘍の発症率と死亡率の増加は見られなかったが、白血病の発症率は1.58倍(95%信頼区間1.07〜2.34)、死亡率は2.32倍(同1.35〜4.01)と、統計的有意差をもって増加した。リンパ性白血病に限ると、発症率は1.55倍(同1.00〜2.41)、死亡率は2.74倍(同1.42〜5.27)。
ドルクは、英国バーミンガム市の北側のはずれに建つサットンコールドフィールドテレビ・FMラジオ放送タワーと、周辺住民の成人白血病の関連について調査。白血病発症率の国家統計から求めた予想値と実際の発症者数とを比較した結果、タワーから2km以内で全種類の白血病が1.83倍(95%信頼区間1.22〜2.74)、慢性リンパ性白血病が2.56倍(同1.11〜5.05)だった。
ホッキング、ドルク以外にも、同様の報告がある。
NPO「市民科学研究室」の電磁波プロジェクトが、現在の東京タワー周辺の電磁波を測定。全測定地点で日本の基準を下回っていたものの、諸外国の基準と比べて高い地点も(5.6〜101.7μW/cu)。
音声や画像などの情報データを電波に乗せることを、変調という。変調されていない電磁波よりも、変調された電磁波のほうが有害ではないかと考えられている。アナログ信号で変調した電波と、デジタル信号で変調した電波を比べると、後者のほうが影響が大きいとの複数の研究報告もある。

 新タワーによる受信障害


現在の東京タワーから新タワーへ、電波送信場所を移すことにより、新たな受信障害が発生する。
東京タワーと新タワーに挟まれた地域など、新タワーによって電波送信場所の方角が変わる地域のビルのオーナー等にとっては、ビル陰の方向が変わることによって、新たな受信対策という想定外の費用負担を強いられる恐れがある。
アナログテレビ放送の停波と、新タワー建設が、両方とも予定通り進んだ場合、まずアナログ放送が終了して、その後、電波の送信場所が新タワーへ移行されることになる。電波送信場所の方角が変わる地域は、新タワーへの移行に伴い、アンテナの方向を変えなければいけない。この費用負担はだれが行うのか?

 地上デジタル放送の問題点


新東京タワーは地上デジタル放送のためのタワーとされている。
墨田区基本構想(05年11月策定)は「区民が誇りにできる新たな観光空間をつくることにより、『すみだ』の魅力や個性を内外に発信します」としている。新東京タワーの根拠である地上デジタル化に重大な問題があれば、新東京タワーは「区民の誇り」にはなり得ない。
2011年7月24日までに現在のアナログテレビ放送は終了し、地上デジタル放送へ全面的に切り替わる予定になっている。地上デジタル放送対応のテレビやチューナーを購入するなどしないと、その日以降はテレビを見られなくなる。
デジタル放送は電波の周波数を有効利用できるため、すべてのテレビ放送をデジタル化することにより、周波数に“空き”が出る。この空いた電波を活用する新たな産業をおこすことが、地上デジタル放送化に踏み切ったそもそもの目的。
地上デジタル放送は、「ゴーストの解消」などのメリットがある(アナログ放送でもケーブルテレビなどではゴーストは発生しない)。
地上デジタル放送によって「双方向サービス」が可能になるとPRされている。しかし、地上デジタル放送であっても、“情報の受信”は電波経由だが、“情報の送信”は電話回線(インターネット)経由だ。電話料・ネット通信料は、視聴者の負担になる。テレビを見ながら電話でアンケートに回答するという「双方向サービス」は、現在のアナログ放送でも、既に行われている。地上デジタル放送のメリットを“水増し”することにより、国民をミスリードしている。
視聴者は、テレビの買い替えなどの負担を強いられる。「格差社会」化が進む中、テレビの買い替え費用を出せない人々は少なくない
山間地、離島などへ電波を送るための小規模中継局の設置に莫大な費用がかかるが、これらの多くを負担するのは、経営基盤が弱い地方テレビ局である。2011年までに、これら小規模局の整備が間に合うのか?
大半の地方テレビ局は、地上デジタル化のために、年間売上高に相当する投資を迫られ、経費削減に必死だ。経営悪化が番組の質を低下させかねないとの懸念が広がっている。
集合住宅の多くは、屋上などに共同アンテナを立て、受けた電波を増幅して各室にケーブルで分配している。共同受信利用者は難視聴地域を除いても、全世帯の3分の1にあたる。更新が必要な場合、賃貸物件なら基本的に貸主が負担するが、分譲マンションでは住民負担だ。
アナログ放送しか見られない数千万台のテレビを、2011年7月24日までに地上デジタル放送に対応させることは物理的に困難。アナログ放送を計画通り2011年7月に終了できるのか疑わしい。

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